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バクテリアの情報伝達経路には,ヒスチジンとアスパラギン酸による
リン酸基転位反応によって行われるものがあり,
二成分伝達系と言われます。
外界の環境変化を捉えるセンサーキナーゼ(ヒスチジンキナーゼ)と
レスポンスレギュレータのペアから成ります。
センサーキナーゼのヒスチジンが自己リン酸化によってリン酸化し,
そのリン酸基がレスポンスレギュレータのアスパラギン酸に転移されます。
レスポンスレギュレータ〜は転写因子として支配下の遺伝子発現に関わります。
本実験は,Sinorhizobium meliloti の 二成分伝達系FixL/FixJ
のin vitro kinase assayです。
His-tagタンパク質として発現,精製したものです。
「FixL autophosphorylation」 はFixLがATP存在下で自己リン酸化する様子を
Mn2+–Phos-tag SDS-PAGEで解析しています。
FixLのHis275がリン酸化したものがシフトアップしています。
「FixL /FixJ phosphotransfer」 はFixLがATP存在下で自己リン酸化し,
そのリン酸基がFixJ に転移する様子を解析しています。
FixJのAsp54がリン酸化したものがシフトアップしています。
さらに興味深い事に,FixJのHis84がリン酸化したものが
Asp-54のリン酸化よりも時間的に遅れて観察されます。
FixJにおいては,Asp-54のリン酸基が加水分解される前に,
近傍のHis-84に一旦,リン酸基を転移し,その後加水分解されるものと考えられます。
(この現象が他のレスポンスレギュレーターにも共通のものかどうかはわかりません。)
FixLJにおけるリン酸基転移反応を模式的に表すと次のようになります。
また,FixJのAsp-54~P が加水分解される際に,
一旦,His-84にリン酸基が転移する事について
活性型FixJではAsp-54の近傍にHis-84が位置していることから(下図)
偶発的な現象である可能性もあります。
機能上の意義はわかりません。
なお,FixJのAsp-54~P とHis-84~Pが異る移動度を示すことから,
リン酸基数が同じでもリン酸化部位が異なれば,分離されることがわかります。
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